馬王堆漢墓に埋葬されていた帛書は世界最古の解剖学書か

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現存する世界最古の人体の解剖学書は、古代中国の時代に書かれた鍼灸書なのかもしれない。
中国の湖南省に馬王堆漢墓(まおうたいかんぼ)という紀元前2世紀、前漢の時代に作られた墳墓がある。

Credit:wikipedia

(画像)馬王堆漢墓の模型

そこには当時の長沙国で丞相をつとめ初代軑侯となった利蒼とその妻子が葬られており、また同時に数々の貴重な副葬品も埋葬されていた。
その中でも帛書(はくしょ)と呼ばれる絹布に文字が書かれた書物は、その内容が政治、思想、科学等多岐の分野に渡っており、当時の文化を知る上で非常に貴重な史料となっている。

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(画像)帛書

その中には医書もあり、そこには当時の中国人が人体の解剖を行っていたと見られる記述も存在する。
しかしその解読作業は容易ではないという。
研究者によれば、解読作業はまず古代中国語を翻訳し、その後解剖学的な知見からその内容を考証する必要があるという。
例えば、鍼灸学では人間の体に「経絡」という気血の流れる通路があるとされている。

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(画像)経絡と経穴

帛書に記述されている経絡の流れについて一部抜粋すると、「手の平から、前腕に沿って2つの骨の間を通り、腱に沿って真っ直ぐに進み、二頭筋、脇の下から、心臓へと繋がっている」とある。
解剖学的に解釈すればこれは尺骨動脈を意味していると考えられる。
この書は医学生や医師に向けて書かれ、また、解剖に使われたのは罪人の体ではないかと研究者は示唆する。

中国の解剖書と言えば宋の時代の「存真環中図」や「欧希範五臓図」が挙げられるが、馬王堆漢墓に埋葬されていた帛書は、それよりもはるかに昔の前漢の時代から医学的な見地で解剖を行っていたことを示唆している。

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